― ネット社会における思いやりと慎重さ ―
近年、SNSやオンラインツールの普及により、誰でも簡単に情報を発信できるようになりました。
便利な反面、「情報をどう扱うか」という基本的な意識が置き去りになっている場面も少なくありません。
無意識のうちに「情報漏洩」になることも
私の身の回りで実際に起きたことです。
退職される方が「みんなで記念写真を撮りましょう」と声をかけてくださり、全員で写真を撮りました。
ところが後日、その写真がSNSに無断で掲載され、さらに別の方へも許可なく送られていたのです。
SNSに写真を載せるという行為は、単なる思い出の共有ではありません。
「いつ」「どこで」「誰といたか」といった情報を、知らない人にも公開してしまうことになります。
場合によっては肖像権や個人情報保護法の観点から問題となることもあり、思っている以上にセンシティブな行為です。
「友人だから大丈夫」では済まされない時代に
「身内だから」「友達だから大丈夫」と思ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、一度インターネット上に出た情報は、完全に消すことができません。
スクリーンショットや共有機能によって、誰でも保存・拡散できるからです。
Z世代の若い方々は、情報社会の中で生まれ育っており、この感覚を自然に理解しています。
一方で、そうした環境に後から触れた世代ほど、そのリスクを軽視してしまう傾向もあります。
どの世代においても、「投稿する前に一度立ち止まる」意識が必要だと感じます。
実績紹介や口コミも「情報の一部」
仕事の実績紹介や口コミ投稿なども、注意が必要な情報のひとつです。
「この方にお願いしました」「このお店が良かったです」といった言葉でも、相手の事情によっては配慮が求められます。
取引先を公表したくない企業や、関係性を明かしたくない方もいます。
そのため、可能な限り事前に確認を取っておくと安心です。
一方で、個人の感想として自分の体験を伝える範囲であれば、問題とされない場合も多くあります。
ただし、誤解を招くような表現や誇張は避けた方がよいでしょう。
ここで関係してくるのが、景品表示法や薬機法(旧薬事法)です。
これらの法律は「消費者を守るため」に存在します。
たとえば、実際よりも効果が高いように見せたり、根拠のない表現をしたりすると、見る人が誤解してしまうかもしれません。
そうしたトラブルを防ぐために、「こういう表現は避けましょう」と定められているのです。
つまり、これらは単なるルールではなく、**“安心して情報を信じられる社会を作るための仕組み”**でもあります。
発信する側としても、「正しく伝える」という意識を持つことが信頼につながります。
善意の紹介が誤解を生むこともある
紹介や口コミは、もともと“良いと思った気持ち”から始まります。
しかし、誇張された紹介や曖昧な表現は、結果的に誤解を生むことがあります。
たとえば、「この人はすごい」「何でもできる」と言われて紹介された結果、
初対面の方が過剰な期待を持ってしまい、後で印象のギャップが生まれることもあります。
紹介や評価というのは、言葉ひとつで人の印象を大きく変えてしまいます。
だからこそ、“相手の立場を思いやる正確な伝え方”が大切なのです。
情報を扱う上で意識しておきたい3つのこと
- 許可を取ること
相手が関わる内容は、ひとこと確認をとる。ビジネスの場合は相手に不安を与えない為にも契約的に個人情報の取り扱いは厳守する、もしくは範囲を定める。 - 誤解を生まないこと
事実と印象のズレをできるだけ減らす。確立していないことを確立したかのように言わない。 - 公開範囲を考えること
「誰が見ても問題ない内容か」を一度考える。
たった一枚の写真、たった一文の投稿でも、思わぬ方向に影響することがあります。
情報は“軽いもの”ではなく、人の信頼を形づくるものだという意識が大切です。
特にネット上では誰が見ているか分からない世界です。ネット上での情報の取り扱いは特に注意が必要です。
まとめ:情報を扱うということは、人を扱うということ
相手の為だと思ってやっていたことが、逆に相手にリスクを背負わせることになっていた。こういうことにはなりたくないですよね。
情報には、その人の思いや背景が込められています。
それを丁寧に扱うことは、相手を大切にすることと同じです。
ネット社会が進むほど、必要なのは「発信力」ではなく「思いやり」かもしれません。
情報を正しく扱うことは、自分と周囲の信頼を守ることにつながります。
これからの時代、慎重さと誠実さをもって情報と向き合う姿勢が、何よりも大切になっていくのだと思います。


