きっかけは、ただの見積書作成だった
ある案件で、補助金を活用したECサイト構築の見積書を作る必要がありました。
最初はよくある流れです。
- クライアントの情報をヒアリング
- 補助対象になる費目を整理
- 金額を計算して、Wordなりエクセルなりに打ち込む
ただ今回は「補助金申請に対応した見積書」という条件がついていました。つまり、ただ金額を並べるだけではなく、
- どの費目が補助対象なのか
- 補助率・上限額を踏まえると、実際にいくら補助されるのか
- 備考欄に費目別の内訳まで明記する
といった、申請書類としての体裁が必要になります。これを毎回手作業でやるのは正直しんどい。そこで「これ、AIに作らせて型を作ってしまおう」と思ったのがスタートでした。
Step 1:まずは1枚、デザインから作ってみる
最初にClaudeに依頼したのは「見積書をPDFとWordの両方で作ってほしい」というシンプルなものでした。
ここで意識したのは、「テンプレートっぽくない、ちゃんとデザインされた見積書」にすること。ネイビーとレッドを基調にしたヘッダー、金額を目立たせるボックス、明細テーブル——よくある事務的な見積書ではなく、「この人に頼んだら仕事もちゃんとしてそう」と思ってもらえる見た目を目指しました。
PDFはPythonのReportLab、Wordは Node.js の docx ライブラリで生成。両方同じデザイン言語(色・フォント・レイアウト)に揃えることで、どちらの形式で送っても印象がブレないようにしています。
Step 2:補助金の制度を調べたら、想定と違っていた
見積書の備考欄に補助金情報を入れる際、最初は「補助率1/2・上限20万円」という設定で進めていました。
ところが、実際に補助金の手引きPDFを確認してみると——
中小企業:補助上限額 80万円 補助率 1/2 小規模企業:補助上限額 60万円 補助率 2/3
上限額が4倍違っていました。これは見積書の金額設計そのものに関わる話です。上限額を正しく確認したことで、実際に必要な業務範囲と市場相場を改めて整理するきっかけになりました。
ここで改めて実感したのは、「補助金の制度情報は、必ず一次資料(手引き・要綱)で確認する」という当たり前のことの重要性。クライアントから聞いた名称や、検索で出てきた情報をそのまま使うと、こういう食い違いが起きます。今回はGoogle Driveに保存されていた手引きPDFを画像化してClaudeに読み込んでもらい、正しい数値を確認しました。
Step 3:相場ベースで金額を組み直す
正しい補助上限額が分かったところで、見積金額の見直しに入りました。
最初の見積りは税込40万円。これを相場感に合わせて見直すと、Shopify構築・FAX API連携・初期設定など、各工程の単価を相場の範囲内で調整することで、税込55万円程度まで上げられる余地がありました。
補助制度を正しく確認したうえで、対象業務を棚卸しし、市場相場を踏まえて見積内容を再設計しました。結果として、業務範囲を反映した適正な見積額は税込80万円となりました。
このとき地味に大事だったのが、「税抜→消費税→税込」の計算を毎回Pythonで検証してから確定すること。手計算だと端数で1円ズレることがよくあるので、按分ロジックをスクリプト化して確認してから見積書に反映しています。
Step 4:Google Driveとの連携で「保存」までを一気通貫に
見積書はPDF・DOCXで作るだけでなく、最終的にクライアントとの共有フォルダ(Google Drive)にアップロードするところまでが「完了」です。
ここでClaudeにGoogle Driveの検索・読み込み・アップロードを任せられるのは地味に大きい。
- フォルダ内のファイル一覧を確認
- 既存の補助金資料PDFをダウンロードして内容確認
- 新しい見積書をフォルダに直接アップロード
という流れが、チャットの中で完結します。「ファイルをダウンロードして→開いて→アップロードし直す」という単純作業から解放されるのは、地味だけど積み重なると大きい時間効果でした。
Step 5:「これ、スキルにしておこう」
一連の作業が一通り終わったところで、ふと思いました。
次に別のクライアントの見積書を作るとき、また同じことを最初から説明するのか?
ここで「スキル化」という選択をしました。Claudeには、よく使う作業手順をテンプレート化して保存しておける「スキル」という仕組みがあります。これに、
- きむらぼの発行者情報(屋号・住所・振込先・インボイス登録番号)
- デザイントークン(カラー・フォント)
- 見積書・請求書・領収書それぞれの構成
- 補助金備考の出し分けロジック
- 税込金額からの逆算・端数調整ロジック
見積書イメージ👇
を全部まとめて、invoice-design というスキルとして書き出しました。
要望があれば一般公開も検討しています。
スキル化してみて分かったこと
1. 「発行者情報を毎回入力する」が消える
屋号、住所、振込先、インボイス登録番号——これらを毎回チャットに書くのは地味にストレスでした。スキルに固定情報として埋め込んでおけば、「見積書作って」の一言で発行者欄が自動で埋まります。
2. 「確認すべきこと」が漏れなくなる
補助金対応の見積書では「補助率」「上限額」「補助対象費目」の確認が必須です。
これを毎回思い出しながら聞くのではなく、スキルの「Step1:情報収集」にチェックリストとして埋め込むことで、聞き漏れがなくなりました。
3. 後からの修正が「指示一言」で済む
スキル化した後に「インボイス登録番号を追加してほしい」という追加要望が出しましたが、これも発行者情報のテンプレートを1箇所修正するだけで、以降すべての書類に反映されます。
最初に「型」を作っておくことの効果を実感した瞬間でした。
振り返って思うこと
今回の一連の流れを通して、AIとの協働で効いていたのは「一回作って終わり」にしないことでした。
- まず動くものを作る(PDF・DOCX生成)
- 実際に使ってみて、ズレ・不足に気づく(補助金上限額の食い違い)
- 修正しながら、ロジックを汎用化する(金額の按分・逆算)
- 繰り返し使う前提で「型」に落とし込む(スキル化)
という順番です。最初から完璧な仕組みを作ろうとせず、1案件をきっかけに、汎用化できる部分を見極めて型にする——これは補助金申請のサポート業務だけでなく、Web制作やコンテンツ設計の現場でも応用できる考え方だと感じました。
次は、この invoice-design スキルをベースに、契約書や提案書のテンプレートにも展開していく予定です。
まとめ
AIで業務効率化というと、「便利なプロンプト」をイメージしがちです。
しかし実際に価値があるのは、日々の実務から見つかった”不便”を仕組みへ落とし込むことでした。
実務があるから改善点が見え、改善点があるからSkillになる。
AIは業務を置き換えるものではなく、業務を資産化するための道具なのだと実感しています。
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