OpenAIがCodexに新機能「Record & Replay」を追加しました。「業務を自動化したいけれど、要件をうまく言語化できない」という壁を、この機能は一気に取り払う可能性があります。一度実際に作業してみせるだけで、Codexがその手順を観察し、再実行可能なスキルとして保存してくれます。地域の中小企業・個人事業主にとって、これは見逃せないアップデートです。
Record & Replayとは?今回のアップデートの概要
「Record & Replay」は、人間が一度実演した作業手順をAIが記録し、編集・再実行できるスキルとして保存する機能です。従来のRPA(Robotic Process Automation)や業務自動化ツールと大きく異なるのは、「言語化」が不要な点にあります。
たとえば、毎週の経費精算や社内申請フォームの入力、定型レポートのメール送信といった繰り返し業務。これまでは自動化するために「どのボタンを押して、どの項目に何を入力して…」という手順書を文章で書き下す必要がありました。今回の機能では、実際に一度やってみせるだけで、Codexがその行動を観察してスキルとして登録します。
登録されたスキルは編集・再利用が可能で、次回からは「このスキルを実行して」と指示するだけで同じ作業を繰り返してくれます。Claude CodeのSkills機能と同じ方向性であり、AIエージェントの「知識を蓄積できる」という特性が実務レベルで現実になってきました。
技術的な背景・仕組みをわかりやすく解説
この機能を支えているのは、マルチモーダルな観察能力と行動のシーケンス学習です。Codexは画面を「見て」、ユーザーがどの要素をクリックし、どのキーを打ち、どの順番で操作しているかを時系列で記録します。
従来のRPAツール(UiPath、Power Automateなど)も画面操作を記録する機能を持っていますが、問題はその「脆さ」でした。UIが少し変わる、ボタンの位置がずれる、ページの読み込みが遅れる——これだけで記録したスクリプトが壊れてしまうことが多く、保守コストが高くなりがちでした。
CodexのRecord & Replayが異なるのは、AI(LLM)が意図を理解したうえで記録している点です。「経費精算フォームに合計金額を入力する」という意図レベルで捉えているため、UIに多少の変化があっても柔軟に対応できる可能性があります。また、記録後に自然言語で編集・調整できるのも大きな特徴で、「金額を入力する前に上司への確認メールを挟む」といった修正も対話形式でできます。
実務での活用方法・ビジネスへの影響
特に中小企業・個人事業主にとって効果が高い活用場面を整理します。
①毎週・毎月の定型業務の自動化
経費精算、売上報告のシート入力、請求書の発行作業など、「やり方はわかっているけれど面倒」な作業が最適です。一度実演すればCodexがスキルとして保存し、次週からは自動で動かせます。
②社内ノウハウの資産化
これまで特定の担当者だけが知っていた操作手順を、Record & Replayで記録しておけば、引き継ぎの負担が大幅に減ります。「属人化した知識」を「再利用可能な資産」に変換できるのは、人手不足に悩む中小企業には特に価値があります。
③IT知識がなくても自動化できる
これまでの業務自動化は「要件を論理的に言語化できる人」が主導していました。Record & Replayは「やってみせる」だけでよく、IT担当者がいない事業者でも自動化の入り口に立てるのが最大のメリットです。
ビジネスへの影響という観点では、AIエージェントが「指示を受けて動く」フェーズから「手順を観察して学ぶ」フェーズへ進化していることを意味します。この流れが加速すると、人間の役割は初回の実演とレビューに絞られ、繰り返し作業はほぼAIが担う構造に変わっていきます。
まとめ:Record & Replayを使いこなすためのポイント
今回のOpenAI Codex「Record & Replay」のポイントを整理します。
まず自動化に向いている業務を棚卸しすることが出発点です。「毎週同じ操作をしている」「手順が決まっていて判断が不要」な作業をリストアップしてみてください。次に一度きれいに実演する意識が大切です。途中で迷ったり手順が乱れると記録の精度に影響するため、スムーズな操作で一通り実行します。
記録後はエッジケースを確認しましょう。金額が0円のとき、添付ファイルがないときなど、例外パターンでも正しく動くかテストしておくと運用が安定します。また、このRecord & Replay機能はClaude CodeのSkillsと同じ方向性にあり、複数のAIエージェントを組み合わせた業務設計が今後の差別化ポイントになりそうです。
「AIに仕事を奪われる」という不安より、「AIに繰り返し作業を任せて、自分はクリエイティブな仕事に集中する」という発想の転換が、これからのビジネスの鍵になります。今こそ、自社の定型業務の棚卸しを始めてみてください。
私自身、ClaudeのSkills機能を使って見積書作成をテンプレート化した経験がありますが、Record & Replayが実用化されれば、「説明する」よりも「一度やって見せる」ことで業務を引き継ぐ場面がさらに増えていくと感じています。
参考・出典:DigiRise News Vol.099(2026年6月26日配信メールマガジン)を参考に執筆・考察しています。




